バラを育てる
■植物と土の関係
植物と土は切っても切れない相関関係にあります。 植物は地中に根を張り、水分や栄養を吸収し成長しています。 そして順調な生育を続けるには適した条件を備えた土壌環境が不可欠です。
地球の表面は地殻と呼ばれる岩石で覆われ、この岩石が長期間の風雨により風化 したものに枯れ枝や生物の糞、死骸などの有機物が加わったものが土です。 これらの有機物は微生物により分解され堆肥となり、植物の根から養分として 吸収されます。
■栽培に適した土
通気性、排水性がよいこと
土に適度の通気性と排水性を高めるには団粒構造の土壌に改良する必要が あります。砂のような細かい土(単粒構造)では排水性が悪く根は 窒息状態となり生育に障害がでる場合があります。
単粒が集まり固まったものを団粒と呼びますが庭土や畑を団粒構造にするには 腐葉土などの有機物や石灰などの資材を加えることで改良できます。

保水性、保肥力があること
必要とする水分や養分を保持できる土のことです、保水性を高めるには 腐葉土などの有機質を多く混ぜることで解決できます。また蛭石(ひるいし)を加工したバーミキュライトが軽くて使いやすく、ハンギング等にも最適です。保肥力を高めるには団粒構造の土を作ることです。
適度な酸度であること
極端な酸性土壌やアルカリ土壌では養分が吸収できないので育ちません。殆どの植物は弱酸性から中性が適しています。酸性土壌には石灰、アルカリ土壌にはピートモスで中和します。
根が十分に張れること
大地にしっかり根を張り地上部を支えるには、土が柔らかすぎても硬すぎても適しません。重すぎ、軽すぎもよくありません。適度な重さ、硬さが必要です。
清潔で異物がないこと
病原菌や有害な微生物などで侵された土では、すぐ病気になったり害虫の被害をを受けやすくなります。またガラス片や鉄くずが混入していると危険です。
■庭植えの手順
- 深さ、幅とも40〜50cm前後の植え穴を掘ります。
- 極端に排水が悪い場合は赤玉土小粒(中粒)を1袋から2袋分を庭土と入れ替えます。
- 改良用土として牛糞(馬糞)、堆肥(長繊維のピートモスまたは、よく完熟した腐葉土) をそれぞれバケツに1杯入れます。
- 生育期は安全の為、肥料は混ぜませんが肥料やけの心配が少ない燐酸肥料バットグアノやマグアンプは適量元肥として混ぜてもよいでしょう。
- 掘った土を戻し、よく混ぜます。
- 根鉢を崩さないように苗をポット(鉢)から抜きます。底に根が回っていましたら その部分だけ軽くほぐし、根を広げるように植えつけます。(成長期は安全のためほぐ しません)
- 根をほぐした場合、枝も軽く剪定して根と枝のバランスをとります。
- 植え床の中央を山高に苗を置き、高さを調整し植え付けます。
- 植え床の周囲を土で高くし、水鉢を作りバケツ1〜2杯の水をあげます。 水が引けたら土をもどします。肥料を置き肥します。
- 泥はね防止と寒冷地では保温のため株元にピートモス等でマルチングします。
- 必ずしっかりした支柱を立て結わえてください。

■鉢植えの手順
鉢の素材・大きさ
鉢の素材はプラ、陶器のいずれでも構いませんが、深鉢で鉢底の排水性が良いものを選ん でください。
鉢の大きさはHT、FL種などコンパクトな品種は8号〜10号、オールドローズ等の 半つる性種は10号〜12号、つる性種は12号以上が適しています。 いずれも樹姿とのバランスがとれる大きさを目安にすると良いでしょう。
植え付け
- 基本的には庭植えと同じです。
- 鉢底には排水のため、ゴロ土(軽石など)を一並び入れます。
- 植え付け用土は赤玉土小粒6、牛糞(馬糞)2、長繊維ピートモス2(腐葉土でもOK) のブレンドでザックリとしたよい培養土ができます。少量の場合はバラ専用土を使うと 手軽で便利です。
- バラは排水性、通気性に富んだ弱酸性の土が大好きです。特に鉢植えは後の生育に大き く影響を与えますので用土選びにも気配りが大事です。
- 一週間後くらいから緩効性肥料の置き肥で株の充実をはかります。 また、水肥を一週間に一回与えると、より効果的です。
■剪定
・木バラの春剪定
剪定の目的は良い芽を残して養分を集中させ、立派な花を咲かせることにあります。 剪定時期はお住まいの地域により若干異なりますが2月中旬から3月上旬が 適期となります。
まず老化枝や弱小枝、内枝、交差枝は日照や通風を悪くしますので整理しますが、 枝数が少ない場合は残して使います。 次に主枝の切り込みになりますが、前年に伸びて一番花を咲かせた枝の充実した外芽 の上で切ります。また前年新しく発生したシュートも1段目で切ります。 目安は樹高の2分の1から3分の2を切り捨てるくらい強めの剪定をします。鉢植えは鉢の高さを考慮して露地植えより強めに切ります。

・木バラの秋剪定
春にくらべ秋は弱い剪定にとどめます。
目安は樹高の3分の1くらいを切り捨てるくらいです。
剪定時期は8月末〜9月5日に枝の中ほどの良い芽を選び切ります。
休眠期は強く、生育期は弱くが剪定の基本です。
なお秋剪定は四季咲き種、2期咲き種以外は必要ございません。
■つるバラの整枝と誘引
つるバラは前年伸びた枝に多くの花をつけます。アーチやフェンス、パーゴラなどに 這わせるための誘引が必要となります。12月に入りますと気温の低下ととも 葉を落とし休眠の準備に入りますので 誘引適期となります。大きく枝を曲げたり 多少の荒い扱いにも耐えれますので思い描く姿に誘引を楽しんでください。 芽が動き出す2月頃までに終えます。
まず古い誘引をほどき枝を地上に下ろし、大まかに束ねると作業がしやすいものです。 切る目安は3年以上の古い枝を根元から外しますが、途中から新しい元気な枝が出ている 場合は古い枝だけを切り捨てます。同時に未熟な枝や不要な葉もすべて取り除きますが この時点では枝は多めに残します。仮剪定が終わりましたたら思い描くイメージで仮誘引 してみます。クリップや大き目の洗濯バサミなどを使うと変更も容易です。 誘引、剪定、確認を繰り返しながら作業を進めると以外と良い結果が期待できます。 何事も経験がすべてかと思います。難しく思わないで積極的にトライしてみてください。 誘引後のすがすがしい姿にこころが洗われます。

■寒肥の与え方
寒肥は1年の基礎肥料としてとても大事です。 バラが生育中は体力の消耗が早く多くの肥料を必要とします。 オールドローズやつるバラのような一季咲き種はあまり多くは必要としませんが 春から秋まで咲き続ける四季咲き性種には多くの肥料を与えなければ美しい花を 咲かせることはできません。肥効の長い有機肥料を寒肥に使うとともに追肥として即効性の化成肥料を上手に使うことが大切です。寒肥の時期は12月から1月が適期です。

■バラに多い病害虫
・黒点病
症状・・ 雨や水遣りのはねかえり等で発生しやすく、梅雨時や大雨後に猛威をふるいます。水滴が7時間以上あると葉に菌が侵入し2週間前後で発病します。下葉から黒い斑点が生じやがて黄色くなり落葉します。古い葉や未熟枝に多く発生しやすく伝染力が強い。

予防法・・ダコニールやオーソサイドの定期散布で予防し、発生時にはサプロール等の治療薬を数回散布します。株元をピートモス等でマルチングする。
発生期・・4月〜11月
・うどんこ病
症状・・新芽、新葉、花首に白い粉をまぶしたようになり、菌が風に乗って伝染します。 心地よい春先、秋口が大好きで昼夜の温度差が大きいと多発します。 気温が30度を超えると一旦休止しますが涼しくなると再び発病します。 また日照が少なかったり、軒下などで風通しが悪い場所は発生の原因となります。

予防法・・込み合った枝を透かし風通しを良くしたり、チッ素分の肥料を控えたりします。
発生時はトリフミン、ラリー乳剤等の治療薬で被害部を洗うように散布します。新芽はワックス効果で薬剤がつきにくいので必ず展着剤を加えます。
発生期・・4月〜11月
・アブラムシ
症状・・温かくなると新芽、茎、つぼみ等に群がり樹液を吸ったり、スス病を誘発したりウイルスを運んでくる場合もあります。繁殖が早いので早期に対応します。

予防法・・モスピラン液剤、オルトラン水和剤、アドマイヤーを散布する。
発生期・・3月〜10月
・バラゾウムシ
症状・・体長2〜3ミリの像のような鼻を持った虫が新芽やつぼみに産卵ししおれさせて落とします。

予防法・・カルホス乳剤、トクチオン乳剤を散布。地上に落ちた茎や蕾は放置しない。
発生期・・4月〜6月
・チュウレンジバチ
症状・・腹部がオレンジ色のハチで茎を割って産卵する。孵化した幼虫は葉裏にむらがり葉脈を残して食べつくす。

予防法・・産卵中は動きが鈍いので捕殺する。幼虫にはオルトラン水和剤、トレボン乳剤を散布。
発生期・・6月〜10月
・ハダニ
症状・・肉眼では見えないほど小さく葉裏に群生して葉液を吸います。葉はかすり状からやがて葉色が悪くなり、カサカサになりやがて落葉します。

予防法・・ハダニは繁殖が早く高温、乾燥を好むクモ科の生物です。
殺虫剤は一切効果がありませんので専用の殺ダニ剤 コロマイト、ダニサラバ、ニッソラン等を散布します。抵抗性がつきやすいので同一剤の連続散布を避け、他の殺ダニ剤との輪番で使用します。予防効果はありません。 水を嫌うので強い水圧で葉裏に散水するも効果があります。
発生期・・5月〜9月
・カイガラムシ
症状・・一年中発生し、4月〜5月に卵がかえります。幹や枝から樹液を吸いロウに覆われ体を保護する、放っておくと株は老化し弱ります。

予防法・・薬が効きにくいので見つけ次第、ブラシでこすり落とします。
多発の場合は散水器の高水圧で飛ばしたり、冬季の高濃度消毒で退治します。
卵がかえる時期にアクテリック乳剤、アプロード水和剤を散布する。
発生期・・1月〜12月
・コガネムシ
症状・・成虫は花、蕾、葉を食べ、幼虫は堆肥分の多い土にもぐりこみ根を食害します。
退治してもどこからなく飛来してくる。
(画像準備中)予防法・・カルホス乳剤、トレボン乳剤等を散布、または捕殺して退治する、誘引ストラップを設置するのも効果があります。成虫は交尾後、土中に産卵しますのでオルトラン粒剤、ダイアジノン粒剤3を土に混ぜます。
発生期・・6月〜8月
・ゴマダラカミキリムシ
症状・・6月から7月に飛来し根元に産卵、ノコギリくずのような糞を出すので 発見しやすいです。導管を加害されると突然生気を失い枯れ死することがあります。

予防法・・ノコギリくずの出どころを探し、高濃度の殺虫剤を注入します。2〜3日様子をみて新しいノコギリくずが出なければ幼虫は退治されたものと 思われます。
発生期・・6月〜8月
・根頭癌腫病
症状・・主に接ぎ木部分や根にコブが肥大し生育が悪くなります。まれに枝にも発生することがあります。土中の菌が水分を通して傷口から感染します。

予防法・・軽症の場合は鋭利なナイフで木質部までえぐり取り、患部に木酢液の原液やマイシンを塗布します。再発する場合は引き抜き焼却します。現在有効な治療法はありませんが癌腫病に抵抗性のある台木の使用やバクテローズを使用することで発病を軽減できます。
発生期・・周年(夏場に多い)
■薬剤散布について
<基本処方>殺虫剤+殺菌剤+展着剤
殺虫剤 | オルトラン水和剤、スミソン乳剤、トレボン乳剤 等 |
殺菌剤 | ダコニール1000、オーソサイド水和剤、フルピカフロアブル等 |
うどんこ病治療薬 | トリフミン水和剤、パンチョTF、ルミゲン、カリグリーン 等 |
黒点病治療薬 | サプロール乳剤、マネージ、ラリー乳剤、サルバトーレME 等 (上記はうどん粉病にも効果が期待できます) |
殺ダニ剤 | ニッソラン、コロマイト、ダニサラバ、マイトコーネ 等 |
展着剤 | アプローチ、スカッシュ、ダイン等 |
・冬季高濃度消毒・・・12月〜2月まで月に1回、石灰硫黄合剤やマシン油で消毒します。 休眠期は高濃度消毒にも耐えれ薬害の心配もありません。(石灰硫黄合剤はアルカリ性が強くサビの原因になるので鉄部にかからないようにします)
黒点病、ウドンコ病、アブラムシ、ハダニ、カイガラムシなどの越冬中の病害虫にすぐれ た効果があり、発生を大幅に抑えることができます。ぜひ実行してください。 薬剤の散布にあたっては近隣への配慮は勿論ですが作業者の体調にはくれぐれもお気をつけてください。
バラは本来楽しむもの、決して苦しむものでは有りません。消毒をしなくてもバラはそれなりに綺麗に咲いてくれ人々を楽しみ、癒してくれます。時には大きな感動さえ与えてくれます。健康に留意され、ご自身に合った楽しいガーデンライフを末長く楽しんでいただきたいと思います。
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